クリスマス・プレゼント
part1
なかなかうまくいかないものね……。
マミは溜息をついた。5回目の試みだ。激しく精神を集中するため、一日に10回が限
界かな、と思っている。まだ一度も満足な結果がでていない。あさってはもうクリスマス
・イブだ。あんまり疲れるわけにはいかない、今日のうちにコツをつかんでおかなくちゃ
。
マミは3日前、高畑と2人で近くの川原を歩いた時のことを思い出す。
「ねえ、高畑さん」
「うん?なんだい、マミくん」
「覚えてる?昔ここで高畑さんが骨折したこと」
「ああ、マミくんが調子に乗って、超能力を使いすぎたときだろ」
「あの事件のときに思ったの、ああ、わたしには高畑さんは必要なんだって」
「なんだい、あらたまって。照れくさいじゃないか」
「せっかくアメリカから帰ってきたのに、今度はドイツだって?」
「うん、フランクフルト大学から招待を受けてね」
「すごいなぁ、どんどん高畑さんが手の届かない人になってくみたい」
「マミくんだって、フランスに留学だろ?すごいじゃないか」
「ええ。ひいおばあちゃんのふるさと、ずっとあこがれていたんだ」
中学生の頃の高畑は、テストのときにはわざと何問か間違えて提出していた。一度、風
邪のために頭がぼぅっとしてしまい、うっかりオール100点を取ってしまったことがあ
ったが、それ以外は決して目立たないようにしてきた。しかし、高校に入学した頃から猛
烈に勉強を始め、高校1年の時に大検に合格、さらに16歳にして東大に合格してしまっ
た。瞬く間に心理学、精神医学、大脳生理学の分野で画期的な論文を発表し、日本人初の
、そして最年少のノーベル医学賞を期待されている。
マミも高校に入学してから本格的に絵の勉強を始めた。連作「少女」。父である画家の佐
倉十朗がマミをモデルにした、マミが最も愛着を持っている作品。それが完結し、日芸展
で最優秀賞を受賞したことがきっかけとなったのだ。二科展に初入選したのは高校2年の
ときだ。現在は美大に通っている。今年は10代最後のクリスマス、そして年が明ければ
高畑はドイツ、マミはフランスへと旅立っていく。
「高畑さんってなにを研究しているの?」
「いろいろだけど、今一番興味を持っていることは、大脳の前頭葉連合野におけるA10
神経のドーパミン受容体(レセプター)が……」
「ああぁっ、難しいことはわかんないから。ようするに、それでなにをしたいの?」
「つまり、みんなは脳の30%しかつかっていないんだよ。でも、マミくんは残りの70
%を使っている。それがどうしてなのか、なぜそれができるのかはまだわからないけど。
それが解明されれば、誰でも超能力者になれる日も、そんなに遠くじゃない」
「みんながエスパーに?」
「ああ、そうなれば、マミくんも決して異端ではなくなる。エスパーが少数派だから、そ
れを排除しようとするんだ。今はエスパーであることをひた隠しにしているし、人知れず
世のために闘っているけど、君ひとりが苦労することもなくなるはずだ」
「じゃあ、私のために?」
「いやぁ、僕がエスパーになりたいってのが正直なところだけどね」
「うれしい」マミは高畑に寄り添い、腕をからませた。
「おい、マミくん」
高畑さんの腕を通して、高畑さんの想いが私の中に流れ込んでくる。
マミ、マミ、マミ、マミ、マミ……。