Self Bondage 第3章
part1
第一志望は、国立のH大。学費も安いし、なんといっても自転車で通える距離というの
が魅力。でも、超難関だから、ちょっとムリだろうな。第二志望はS大、C大、HS大と
いったところ。どこも電車とバスを乗り継いで一時間、車の免許をとれば、30分もかか
らずに行けるところばかり。家から通えるところというのが、両親がだした条件。一人暮
らしもしてみたかったけど、親と一緒の方が気楽だし、やっぱり安心できる。でも、なん
で八王子の大学って、みんな山の中ばかりなのかしら。
春の風が菜穂子の頬をくすぐる。ツツジの燃えるような赤と、クヌギの新芽の淡い緑が
眼に心地よい。木洩れ日を浴びながら、菜穂子は玉川上水沿いの小道を歩いていた。太宰
が情死した川。川幅は狭いけれど、身をのりだして覗き込んでも水面が見えない。太宰が
死んだ当時は水を満々と湛えていたという。この川幅では水の流れもかなり急だっただろ
う。人食い川とよばれていたというのも、うなずける。
5回目の自殺でやっと死ぬことができたのよね、たしか。そのうち3回は心中、全部あ
いては違う女性。やっぱり魅力的で、危険な男性だったのだろう。強さと弱さをあわせ持
った人。わたしはそのどちらにも憧れる。
「菜穂子!シュークリーム分が不足してきたぞ!!」
「それはタイヘン!シュークリーム分はおもにシュークリームに含まれ、それが不足する
と、記憶力、集中力がにぶってくるのよね!」
「そうだ!だからおやつにしよう!」
「まったく、初音ったら。さっき休憩したばかりじゃない」
「しょうがないだろう。煮詰まってきちゃったんだから。もう、『あずまんが大王』のち
よちゃんみたいに、天才能力をあたしがもっていたらなぁ!」
「大阪さんのわすれもの能力は持っているんじゃない?」
「まったくだ」二人は笑いながら、お茶の準備をはじめた。
「菜穂子、ごめんね。あたしの勉強につきあわせちゃって。自分の勉強ができないだろ」
「そんなことないよ。本当に理解していないと、人に説明なんかできないから。初音に勉
強教えるのって、すごくわたしの勉強にもなっている」
「ホントに?」
「うん、ほんと。この間の模試でも、H大、F判定からC判定にあがったから」
「すごいじゃん。よ〜し、がんばってあたしも菜穂子と同じ大学にいくぞ!って、いくら
なんでもH大はムリだよ、菜穂子〜」
「だいじょうぶよ、わたしもムリだから」
「菜穂子が楽勝で入れるところに、なんとかギリギリで入ろうって計画なんだから、そこ
んとこよろしくね」
「でも初音、あんたもすごく成績あがったんじゃない?」
「先生がいいからね。この間の模試では300人抜き、達成!」
「すごいなぁ。ムリしてない?」
「だいじょうぶ、ちゃんと気分転換しているから」
「気分転換って?」
「アレよ、アレ!」
「アレって、アレ……?」
「そう、アレ」
「いいなぁ、カレシがいる人は」
春休みに初音のカレシを紹介してもらった。茶髪にピアス、ちょっと怖そうだったけど
、優しい眼をした人だった。友達のカレシと話すのって、ちょっと気まずいのよね。初音
からいろんな話を聞いているから、この人が初音とあんなことやこんなことをしているん
だ、と思うと、なんとなくわたしの方が恥ずかしくなってくる。
「菜穂子はやっぱり、アレ?」
「う……ん。夜中まで勉強していると、疲れて、頭がぼーっとしてきて、気がつくと、ね
」
「あたし、菜穂子がすきなこと、だいぶわかってきたよ」
「やめてよ」
「菜穂子はね。悪い人に誘拐されて、逃げたくても逃げれない自分を想像するのが好きな
んだ」
「やめてってば」
「手も足も縛られちゃって、助けを呼ぶこともできなくて、スカートをめくられたり、お
っぱい触られたりして、いやだって思っているのにおっぱいびんびんに感じちゃって、そ
れがばれるんじゃないかってびくびくして……。そんな状況そのものが大好きなんだ」
「あぁ……」
「それで菜穂子はいやらしい言葉を言われるのが好きなの。どうしたんだい?乳首がこん
なに勃っているよ、感じているのかい?お上品そうな顔をして、本当はこんなにいやらし
い娘だったんだ」
「初音ぇ……」
「からだが心を裏切っていく瞬間が好きなの。そんな自分を想像しただけで、あそこを濡
らしちゃうのよね」
「だめぇ。初音。我慢できなくなっちゃうよぉ」縛られたい。今縛られて、極限まで勃起
した乳首に触れられたら、達してしまうかもしれない。
「菜穂子……」冗談交じりに話していた初音の声が、湿り気を帯びてきた。空気が澱む。
「縛って……あげようか?」うなずいてしまいそうだ。
「ありがとう、初音。でも……やめよう」はらはらと涙が頬を伝う。
「なぜ……」
「わたしきっと、のめりこんじゃう。自分で自分を制御できなくなる。そんな自分が怖い
」
「そんな、そんなことないよ、菜穂子」初音の声が震えている。
「わかっている。もっと気楽に考えればいいってこと。でも、ダメなのよ」
「ごめんね、菜穂子」
「いいの。わたしが悪いの。」
「ごめんね、ごめんね」初音の指がわたしの髪を撫で、わたしの肩を抱く。わたしは頭を
初音の肩に預けた。
「初音、いまは勉強をしよう。そしてね、大学に入ったら、わたし、恋をするんだ。もう
、身も心も燃え上がるような恋をね。そしたらね、まっさきに初音に報告するからね。も
ういい、やめてくれって言われても、するからね」
「ああ、楽しみにしているよ。菜穂子みたいなコはね、普段臆病なくせに、一度走り出し
たら止まらなくなっちゃうから。そんときは後ろから羽交い絞めにしてでも止めるからね
。だから、がんばって絶対同じ大学にいくよ」
はじめて二人は顔を合わせて笑った。
part2
漆黒の闇。何も見えない。どうして?声を挙げようとして、口の中に詰め物をされて猿
轡を噛まされている事に気づく。えっ、どういうこと?目隠しをされているの?いったい
、誰が?どうして?頭の中が真っ白で何も考えられない。手足を動かそうとして、菜穂子
は自分が後手に縛られ、脚も膝をそろえて縛られていることを認識する。どういうことよ
、いったい?菜穂子は同じ問いを頭の中で繰り返す。答えは返ってこない。疑問符だけが
、菜穂子の頭の中をぐるぐると駆け巡る。
縛めから逃れようと、試みる。無駄なことは最初からわかっている。視覚を奪われ、皮
膚の感覚が通常より鋭敏になっている。いつしか、厳しく縛められた手首から、腕から、
締め上げられた乳房から、ぴったりと重ねられた太腿から、身をもがくほどに妖しい感覚
が湧き上がってくる。口をふさがれて、呼吸が苦しい。その圧迫感もさらに菜穂子の気持
を高ぶらせる。喉の奥からくぐもった喘ぎ声が漏れる。首筋から鎖骨にかけて汗の玉が吹
き出ている。アセテートのインナーが皮膚にはりつく感触すら菜穂子は、悦びに感じてい
る。
ガチャリ、パチッ。空気が動き、瞼の裏がかすかに光を感じる。人の気配。女物のコロ
ンと男物の整髪料の香りが鼻腔をくすぐる。動いた空気が菜穂子の汗に濡れた皮膚から熱
を奪い、菜穂子は大きく身震いをする。誰?誰なの?
「すっかり悦んでいるようね、菜穂子」初音!?
「見たでしょ、ねっちゃん」
「知らなかったよ、菜穂子ちゃんにこんなシュミがあったなんて」どうして、ねっちゃん
がここに!!!
「菜穂子はね、こんな清純そうな顔して、縛られて悦ぶ淫らな変態なの」初音!どうして
そんなひどいことを言うの!?
「ああ、とても僕の手には負えそうにもないね」そんな、ねっちゃん!
「でしょ?こんな変態ほっといて、私たちで楽しみましょ」いやあああ、初音!ねっちゃ
ん!やめてよ!お願いだから!いやああああ!!!
立川駅北口行きのバスに乗って立川駅へ。立川から中央線で3つ目の駅が八王子だ。そ
こからまたバス。家から大学までは一時間ちょっとだ。車なら30分もかからない。夏期
休暇に入ったら免許を取ろうと菜穂子は思う。今日は一コマ目から講義がある。嫌な夢を
観たせいで、頭が重い。夢そのものも嫌な内容だったが、大学までの車中で自己流の夢分
析を行い、導き出された結論に余計に滅入ってしまった。
掲示板を覗くと、一コマ目は休講だった。ついていない時はとことんついていない。2
時間近く空き時間ができてしまった。2コマ目は外語だから家に帰るわけにもいかないし
、遊びに行く場所もない。八王子ってホント、辺鄙よね。
仕方なく教授の研究室に足を運ぶ。C大のN教授は近・現代文学の権威だ。将来はここ
の研究室に入りたいと、菜穂子は思っている。
「失礼します」ノックをしてから扉を開ける。
「やあ、菜穂子ちゃん」ねっちゃんだ。鼓動が早まる。
「お早いですね」平静を装って椅子に腰掛ける。
「休講だったの?」
「そうなんですよ」
ねっちゃんはN教授の後継者と目されている修士課程の2年生だ。古今東西の文学から
マンガ、アニメ、ゲームまでその知識は幅広く、悪魔のように頭が切れると評されている
。
「菜穂子ちゃんは太宰を研究テーマに選んでいたね」
「そうです」
「太宰って、暗いというか、女々しいイメージがあるんじゃない?」試されてる。菜穂子
の体に緊張が走る。
「そういうところも魅力のひとつですが、決してそれだけではないと思います。強さと弱
さをあわせ持った人だったと思います。実生活では弱い人でしたが、言葉の持つ力を信じ
ていた芯の強い人でもありました」
「どんなところからそれを感じる?」菜穂子は言葉を選びながら語った。
「中期の作品に、それは特徴的に現れていると思います。戦争の影が濃くなる中、多くの
作家が軍部に迎合する翼賛的な作品を発表するか、筆を折っていた時、太宰だけは『お伽
草紙』や『新ハムレット』、『右大臣実朝』といった文学的に優れた作品を発表しつづけ
ていました。時代に流されず、絶望もせず、言葉の持つ力を信じつづけた太宰がそこにい
ます」
「そうだね、僕もそう思う」はあーっ、菜穂子の肩から力が抜ける。こういう時のねっち
ゃんはとても怖い。悪魔のように切れるという評判は伊達ではない。
ドアをノックする音。「こんちわー」と初音の能天気な声と顔が研究室に現れる。
「あれっ、菜穂子とねっちゃん先輩だけですか?お邪魔しちゃったかな?」
「なにいってんのよ、そもそも同じ講義を取っているんだから、あんたも休講だったはず
じゃない。なに今ごろ現れているのよ」
「あの教授は講義の最後にしか出席とらないじゃん。菜穂子、まじめなんだから」
「まあまあ、初音ちゃんもそこに座ってよ。いまおいしいコーヒー淹れるから」
「ありがとうございます。ねっちゃん先輩、菜穂子となに話してたんですか。愛の語らい
?」
「まあ、そんなとこ。それじゃあ、菜穂子ちゃん。太宰の中期の作品の特徴と好きな作品
を教えてくれない?」
「あっ、はい。そうですねぇ。特徴としては聖書やハムレット、海外の作品、おとぎ話と
いった題材を扱った作品が多いですね。『メロス』もそうだし『駆け込み訴え』や『女の
決闘』、『新釈諸国噺』などですね」
「菜穂子、声が裏返っているよ」「うるさい」初音の腕を肘でつつく。
「好きな作品は『駆け込み訴え』や『津軽』、『女生徒』、『富岳百景』などですね。
あと、『待つ』や『満願』などの掌編も好きです」
「いいところを突いているね。菜穂子ちゃんはいい研究者になれるよ。『待つ』なんか隠
れた傑作だしね」ねっちゃんが褒めてくれた。うれしさが全身にこみ上げる。
「菜穂子、すごいじゃん。ねっちゃん先輩ってめったに人を褒めないって評判なのに」
「そんなことはないよ。優れた才能と努力には、素直に敬意をあらわすよ」
「ねっちゃん先輩も『待つ』は傑作だと思いますか?」
「うん、すごいね。『女生徒』なんかもそうなんだけど、よく男性であそこまで女性特有
の、なんて言うのかな……」
「皮膚感覚?」
「そう、皮膚感覚!あれを表現できるものだと感心する」やっぱりそうなんだ。ねっちゃ
んにはわかるんだ。
キャンバスのベンチに初音と二人、腰を下ろしてサンドイッチの昼食を摂る。梅雨が明
けたら、暑くて戸外で食事なんかできないだろう。つかの間の憩いの時だ。
「ねえ、菜穂子」「なに?」「ねっちゃんにもう縛ってもらった?」飲みかけの牛乳を噴
き出しそうになる。
「な、な、なに言ってるのよ!」
「だって、いい感じじゃん。好きなんでしょ?ねっちゃんだったらあたしも反対しないよ
」
「そんな、そんなんじゃないのよ。ねっちゃんは尊敬する先輩。それだけよ」
「ウソ、ウソ。あたしにはわかるんだから。だいじょうぶ。ねっちゃんは菜穂子にゾッコ
ンだよ。そして菜穂子はねっちゃんに首ったけ」
「それ、どちらも死語だよ、初音」
「好きなら、すぐに行動しなきゃ。ねっちゃん、見た目は冴えないけど、結構人気あるぞ
」
わたしが気になっているのは、今朝の夢のこと。別に初音がねっちゃんを盗ったりする
とか、そんなことではない。あの夢の中の初音は、実は初音ではない。初音の姿を借りた
わたしの超自我(スーパーエゴ)。わたしみたいな性癖を持った女の子は、ねっちゃんに
ふさわしくないのではないか、と私自身が思っているのだ。わたしの秘密を知ったら、き
っとねっちゃんはわたしから離れていく。わたしの心はどんどんねっちゃんに惹かれてい
るのに。でも好きになる気持が高まるにつれて、不安もどんどんつのっている。嫌われた
くない。わたしはどうすればいいのだろう。
part3
涙がとまらない。ぬぐってもぬぐっても、滂沱と涙が頬を伝う。
「菜穂子、玉ねぎのみじん切り、用意できた?」フライパンと格闘しながら初音が尋ねる
。
「あっ、うん、こっちはオーケーだよ」
「いい匂いがしてきたね」「はいはい、大家さんは2階で待っていてください」
今日はN研恒例、夏の大カレー大会。なんでも、暑いときには熱くて辛いカレーを食べ
て暑気払いをしよう、というねっちゃんの提案で始まったのだそうだ。第一回からねっち
ゃんの家で行なっていると言うことだから、恒例と言っても、まだ2回目か3回目だろう
。
幹線道路に架かる橋から、上流に向かって堤防沿いに10分ほど歩くと、小さな児童公
園が見えてくる。その公園の脇の路地をはいると、2階建ての小さな一軒家がある。ねっ
ちゃんはその一軒家を借りているのだ。実家は確か岐阜の方と聞いている。私も何度か伺
ったことがある。もちろん、一人ではない。N研のみんなと一緒だ。わたしと初音、それ
にO先輩にW先輩。
一軒家、バス・トイレ・キッチン付きで6部屋もあるのに、家賃が月3万円というのだか
ら、おおよその予想はつく。ある意味、実にねっちゃんらしい家と言える。厨房(という
より“お勝手”と呼ぶのがふさわしい)やバス・トイレは1階にあるのだが、その階にあ
る部屋はすべて書庫と化している。ここにある本をすべて2階に運んだら、たちどころに
床が抜けてしまうだろう。2階にあるねっちゃんの寝室兼居間兼書斎兼その他もろもろの
八畳間が宴会会場だ。人間が五人も入る物理的空間など存在しないのに、カレーを食べ、
ビールまで飲もうというのだ。考えただけで汗が吹き出てくる。
「はい、カレーができましたよ〜。先輩達、炊飯器に食器、ビールにコップ、ちゃっちゃ
っと運んじゃってください。働かざるもの食うべからず、ですよ〜」初音はいつのまにか
、すっかりN研を取り仕切っていた。
「じゃあ、菜穂子。あたし先に帰るから」
「え〜、初音、わたし一人に後片付け押し付ける気?」
「なに言ってるのよ、みんな、あんたに気を遣ってるんじゃないの。がんばんなよ。これ
をあたしだと思って!」初音が菜穂子の手に握らせたものはゴム製品だった。
「ちょっと、これがあんたなの?」
「ねっちゃんはそんなことしないと思うけどね。ナマでしたい、なんて言い出したらキン
タマけとばして逃げてくるのよ。結局、泣くのは女なんだから」
「初音、あんた……」それ以上は聞けなかった。「うれしいけど、わたしから、はいどう
ぞ、なんてだせないよ。最初からそのつもりでここに来たみたいじゃない」
「それもそうだね。じゃ、あたしがねっちゃんに渡してくるよ」
「わああああぁ、初音ぇ、お願いだからやめてえええぇ!!」かまわず初音は階段を登っ
ていってしまった。耳たぶまで熱いのは、ビールのせいだけではない。
川から風が流れてくる。火照った頬に心地よい。ねっちゃんが淹れてくれたコーヒーが
乾いた喉を潤してくれる。二人の間を静かに時が流れていく。ねっちゃんが口を開いた。
「初音ちゃんって面白いコだね」頬がまた火照ってくる。
「恥ずかしいこと、いってませんでした?」あのコったら、なにを言ったのだろう。
「『先輩は、ちゃんとコンドームを持っていますか?』って。『いまのところ、必要ない
からね』って答えたら、『いつ、どこで必要になるかわからないじゃないですか。避妊は
男性にも責任があるんですよ。ちゃんと持っていてください』って、手渡されちゃったよ
」
「あの酔っ払いめ。はずかしいなぁ」なんで初音の行動で、わたしが恥ずかしがらなくち
ゃいけないのよ!
「うん。でも、すごく真剣だったんだよ。もしかして……」
「あっ、先輩もそう思いましたか?」
「なにか、知らないかい?」ねっちゃんの瞳に翳りが差す。
「詳しいことはわかりません。わたしたちが知り合った頃には、もう今のカレシとつきあ
っていたし。カレとの時には必ず避妊はしていたと聞いていたから。なにかあったとした
ら、その前だと思います。あのコ、ちょっとワケアリだったから」そう言えば、自分がゴ
ミ箱になったような、みじめな気持になるって、そんなことを言っていた。
しばらく言葉が途切れた。重い沈黙。やがてねっちゃんが静かに、だけど深みのあるテ
ノールで懐かしいメロディーを口ずさみはじめた。
しゃぼん玉 消えた
飛ばずに 消えた
生まれて すぐに
こわれて 消えた
悲しい歌詞。哀調に満ちたメロディー。ああ、この歌はこんなに悲しい歌だったのだ。
「野口雨情が夭折した子どもを想い、創った歌だそうだ」そうだったのか。
「子を亡くした親の想いは、僕なんかにはとても想像することもできない。本当に身を削
られる想いだと思う。野口雨情は、見事に文芸に昇華したけど、ものすごい意志の力だっ
たと思う」
「わたしも、きっと耐えられないと思います」
「僕には姪がいるんだけどね。姉の子で、まだ生後一ヶ月だ。保育器からでることができ
ない。七ヶ月の早産でね。生まれた時には1400グラムしかなかった。
手のひらに収まってしまいそうに小さいのにね。全身に力を込めて、真っ赤になって泣
くんだよ。生きたい、生きたいってね。一度は母子ともに危険な状態に陥った。義兄さん
はひたすら祈っていた。人間の生きようという意志ってすごいね。祈りって、こうやって
生まれるんだなって思った」
ねっちゃんの瞳から光るものが伝った。わたしもいつしか口を押えて、嗚咽が漏れるの
をこらえていた。
「助かったとわかった時の気持は表現できない。僕の子どもじゃないんだよ。それでもね
。“五体満足であれば”ってよく言うじゃない。あれは違うね。人は、生きている、とい
うただそれだけで、尊いんだ」
わたしは何かに感謝していた。神様なんて信じたことはない。だけど、もし神様と言う
ものがいるとしたら、私はその神様に感謝したい気持でいっぱいになった。この人にめぐ
り合わせてくれて、ありがとう。この人を好きになって、よかった。
「先輩……、……好きです」自然に言葉が漏れた。純粋な、わたしの心のかけら。
「迷惑……、ですか?」ねっちゃんはなにも言わなかった。暖かな唇がわたしの唇を覆っ
た。わたしはそっと瞳を閉じる。ねっちゃんの腕がわたしを抱き締める。わたしも自分の
腕を、そっとねっちゃんの首に廻す。
時がとまる。永遠の瞬間。
ねっちゃんの唇がわたしのうなじから首筋を這う。痺れるような感覚が押し寄せてくる
。ねっちゃんの胸板に押しつぶされて、胸の中心から甘い疼きが沸き起ってくる。あぁ。
甘い声が漏れる。少し恥ずかしい。
ねっちゃんの指が、舌が、わたしの胸を愛撫する。ブラウスの胸元をはだけられ、敏感
な頂点を吸われたとき、秘密の部屋から熱い泉が湧き出すのを感じた。我慢ができない。
「しば……っ、て……」気がついたら、声に出していた。
ねっちゃんの動きがとまった。
凍りつく、時間。
しまった!
しまった!!
でも、口から外に出た言葉は、もう還ってくることはない。
「きみ……、そういうヒト……なの」
「ごめんなさい!!」「あっ!菜穂子ちゃん!!!」気がつけば夢中になってねッちゃん
の家を飛び出していた。どうしてあんなこと、言ってしまったんだろう!菜穂子のバカ!
バカ!!変なコと思われてしまった!どうしよう!どうしよう!!涙で前が見えない。ど
こかで初音の声が聞こえたような気がしたけど、頭の中が混乱して、なにがなんだかわか
らなくなって。神様なんか信じない!どうしてわたしをこんな体と心を持った女の子にし
たの!神様がもしいたら、一生呪ってやる!!
どうやって家まで帰ってきたのか、わからない。気がつけば家の前だった。お母さんの
顔を見ることができない。部屋まで一気に走って、勢い良くドアを閉め、鍵を掛ける。
「菜穂子!どうしたの!!」お母さんの声が聞こえる。ごめんなさい、お母さん。わたし
、どうしたらいいのか、わからない。
part4
……うるさい。携帯電話なんか壊れちゃえ。電源、切っとけばよかった。放っておこう
。わざわざ取り出すのも億劫だ。
もうおしまいだ。明日になったら、菜穂子は縛られたがりの変態娘ってみんなが知って
しまう。……ううん、ねっちゃんはそんなことを言い触らすような人じゃない。だけど…
…。どんな顔をしてねっちゃんに会ったらいいの?明日は大学を休もう。……でも、もし
もねっちゃんがわたしの秘密を誰かに話していたら?……、その時はねっちゃんを殺して
、わたしも死のう。お父さん、お母さん、ごめんなさい。
どれだけ泣いただろう。ドアフォンを誰かが鳴らす音がする。母のばたばたという足音
が玄関に向かう。時計を見上げると、帰ってきてからまだ一時間も経っていない。こうい
う時って、どうして時間が流れるのが遅いのだろう。
「はあい、どちらさま?えっ、どうしたの、あなた、その顔?」
「夜分失礼いたします。菜穂子さんには大学でお世話になっています、ねっちゃんと申し
ます。菜穂子さんはご在宅でしょうか?」
「あぁっ、あなたが。こちらこそいつも菜穂子がお世話になっています。なおこぉ!ねっ
ちゃんさんがおみえよぉ!なおこったらぁ!……すみませんねぇ、なんか今日、ちょっと
変なのよね」
ねっちゃん!どうしよう!でも、どんな顔をして会ったらいいのかわからない。
「菜穂子さん!」ねっちゃんが大声で叫んだ。
「今日は本当に申し訳ありませんでした!」
「あらあら、ねっちゃんさん、手をあげてください」
「とても許してはもらえないことはわかっています!でもどうしても謝らずにはいられな
かったのです!申し訳ありませんでした!……菜穂子さんのお母さん、大きな声でご迷惑
をかけてすいませんでした。失礼致します」
「いいんですか?」
「お母さん!!」わたしはドア越しに叫んだ。「お願い、待っていただいて!わたし、お
顔を洗ってきますから!ねっちゃんさん!どうぞ、あがってください!」
腫れぼったい瞼、お化粧も涙で剥がれてひどい顔をしている。冷たい水で顔を洗い、お
化粧を直す。くしゃくしゃになった服も着替えた。
ねっちゃんは律儀に玄関先に立ったまま、待っていた。
「お待たせしました」顔をあげてねっちゃんと目を合わす。噴き出してしまった。
「どうしたんですか?その顔」ねっちゃんは目の下に青黒い内出血の痣をつくっていた。
眼鏡も割れて、シャツの胸ポケットに無造作に突っ込まれている。
「うん、あとでゆっくり説明するよ」
「じゃぁ、お母さん、ちょっと出かけてきます」
「はい、ごゆっくりね」
「いえ、すぐに帰りますから」
わたし達は近くの公園まで歩いた。ねっちゃんの顔を見たことで、ちょっと心が落ち着
いてきたのを感じる。
「君が僕の家から飛び出した後、僕は何てバカなんだろうと、呆然としていたんだ。取り
返しのつかないことをしてしまった。なんて謝ったらいいんだろう、とね。そうしたら初
音ちゃんがすごい勢いでやって来てね。『菜穂子になにをしたぁ!!泣きながら駅まで走
っていったのよ!呼びかけても聞こえちゃいない。どういうことなの!!!』僕はありの
ままの事実を話した。そしたらいきなりグーでね。腰の入ったいいパンチだったよ」
「まあ、初音ったら。……やっぱりあれは初音だったのね」
「『菜穂子がそのことでどれだけ悩んでいたか、あんたにはわからないのか!わたしなん
か、ねっちゃんにはふさわしくない、なんてこと言ってたんだ。正真正銘の処女のくせに
!あんたがこんなバカだったなんて!』
そうだ、僕は本当にバカだ。ただ、ちょっと驚いただけなんだ。それなのにあんなこと
を言ってしまって」
「ヘンなコだって思ったでしょ?」
「いや、ホントにちょっと驚いただけなんだ。僕は頬を押えながら『謝らなくちゃ』と言
ったんだ。『もう許してはもらえないかもしれない。でも、謝らなくちゃ』ってね。初音
ちゃんは『なにぐずぐずしてんのよ!そう思ったんならとっとと追っかけなさい』と言っ
たんだけどね。『彼女の家、知らないんだ』って、間髪いれずにもう一発」
わたしはしばらく笑い転げてしまった。初音らしい。目に浮かぶようだ。
「それでここまで初音ちゃんに送ってきてもらったんだけど、車の中で初音ちゃんが言う
んだよ。『謝るのはいいとして、それで、あんたはどうするの?』って。『これっきり愛
想を尽かされちゃうかもしんないけど。やさしい菜穂子のことだから、きっと許しちゃう
んだろうな、こんなバカでも。で、あんたは菜穂子の思いに応えられるの?』
正直、経験がないからよくわからない。ただ、もし許してもらえるのなら、菜穂子ちゃ
んの思いに応えたい。そう言ったら『あんたねえ!義務感で縛ってもらったって嬉しくも
なんともないのよ!そんなんだったら、すっぱり菜穂子のことはあきらめなさい!』僕は
思わず叫んだよ。
『初音ちゃん!前見て運転して!』
おかげで殴られるのだけは免れたみたいだ。違うんだよ。義務なんかじゃない。恥ずか
しいけど、菜穂子ちゃんにそういうことをする想像をしたこともある。つまりは、二人の
思いが一致するかどうかってこと。菜穂子ちゃんが悦ぶのなら、それは僕にとっても悦び
なんだ」わたしはそっとねっちゃんの腕に、腕をまわした。
「初音ちゃんはあきらめたようにつぶやいたよ。『まったく、菜穂子といいねっちゃんと
いい、どうして頭がいいやつらって、こうバカばっかりなんだろう』って」
「わたしね。高2の時からずっと、自分で自分を縛って、いじいじと悩んでいたの。男の
子とつきあうことが怖くてね。自分がこんなコだから、相手がもし悪い人だったらとんで
もないことになっちゃうし、それ以上に、わたしがわたしでなくなっちゃうような、もう
一人のわたしを自分で押えられなくなるんじゃないか、って思っていたの。初音のいうと
おり、バカなコだわ、わたし」
「ここは初音ちゃんのおせっかいに感謝するべきなのかな?」
「ホントにこんなコでいいんですか?」ねっちゃんの唇がわたしの唇をふさいだ。
「今日はもう帰ろう。お母さんが心配する。こんな顔じゃ、ムードもなにもあったもんじ
ゃないし、明日は眼鏡を直しに行かなくちゃ。今度の日曜に、会おう」
「それで?……家を出る時には処女だった娘が、帰りには非処女になってお母さんの顔を
見ることができなかった、って話なわけ?」
「ふふふ……、不思議ね。そう思ってたんだけどぜんぜん平気なのよ。女って怖いね」
「あぁっ、もうばかばかしい。あたしったらホント、バカみたいじゃない。こうなったら
根掘り葉掘り聞いてあげるからね、覚悟してなさい」
わたしたちは八王子駅北口で待ち合わせて、映画を観、食事をした。二人ともがちがち
に緊張していて、ほとんど言葉も交わさなかったし、食事の味もわからなかった。食後の
コーヒーを飲んでいるとき、「この後、どこへ行く?」とねっちゃんが尋ねた。「ねっち
ゃんのお部屋がいいです」とわたしは答えた。ホテルには行きたくないというか、心理的
抵抗が強かったし、なによりねっちゃんの香りに包まれていたかった。
一度八王子駅に戻り、コインロッカーから紙袋を取り出すと、ねっちゃんの家まで歩い
ていった。「お願いですから、家中の鍵を掛けてくださいね」菜穂子の心配性は死ぬまで
治らないようだ。
沈黙が流れる。わたしは思い切って、紙袋を持ったままお手洗いにたった。洗面所の鏡
の前でブラウスをはだけ、ブラジャーを抜く。紙袋の中に忍ばせた秘密の宝箱からラバー
製の穴あきブラジャーを取り出すと、それを身に着けた。乳房の根がぎゅぅっと引き絞ら
れて、ぱんぱんに張り詰めてくると、わたしのなかで何かのスイッチが入る。ムリに胸の
ボタンをとめる。力を入れるとボタンが弾け飛びそうだ。きちんとブラウスのすそをスカ
ートの中にいれ、鏡を覗く。裸以上にいやらしいわたしがそこにいる。
ゆっくりと2階への階段を上る。一段上がるごとに、全身の筋肉が弛緩と緊張を繰り返
す。そのたびに尖りきった乳首に甘い疼きが走る。薄いブラウスの布地が乳首をこすり、
思わず声が漏れそうになる。
「ちょっと待ってよ!なに、その《らばあせいのあなあきぶらじゃあ》って!あたし、そ
んなの知らないわよ!」
「初音にはナイショにしてたの。恥ずかしいから」
「そりゃ恥ずかしいでしょうよ!あんた、そんなものまで持ってたの?可愛い顔していや
らしい娘だねぇ。そんな菜穂子みせられちゃ、もうねっちゃん、辛抱たまらんでしょう!
」
「うん、……あのね」
最終回
「……菜穂子ちゃん……」ねっちゃんの喉が大きく鳴る。恥ずかしくてねっちゃんの顔を
まともに見ることができない。思わず俯くと、ブラウスの布を突き上げる巨大な乳房と尖
った乳首が視界に飛び込み、ますます恥ずかしくなってしまった。
わたしは紙袋の中身を畳の上に広げる。3cm巾の黒いラバーロープが3本、ラバー製の
ショーツとウエストニッパ。
「高2の時、両親に温泉旅行をプレゼントして、ネット通販で買いました。その夜からず
っと、わたし一人の宝物。いつか二人の宝物にできる日が来るといいなって」両腕で胸を
そっと抱き締める。張り詰めきった乳房の感触は、自分であって自分でないようで、とて
も愛しい。涙が一筋、頬を伝う。なぜ泣いているんだろう、わたし。
「僕は、どうすればいい?」
「ねっちゃんの好きにしてください。この間ねっちゃんは、菜穂子の悦びがねっちゃんの
悦びだって仰ってくれました。わたしも同じです。ねっちゃんの悦びはわたしの悦びです
」
ねっちゃんの息が荒くなるのがわかる。
「菜穂子ちゃん、すごくキレイだよ。よく、見せて。手を後ろに回して、胸をそらせて」
言われたとおりに手を後ろに回し、胸をそらすと、乳房はさらに大きく張り詰め、ブラ
ウスの布地を突き破って乳首が飛び出しそうになる。ねっちゃんの掌が、そっとわたしの
胸に触れ、やさしく表面を撫で上げる。乳首を触って欲しい!大きな声でそう叫びたい。
乳首を甘い疼きが襲い続けている。タイトなミニスカートに包まれた太腿の、そのつけ根
が熱を孕んでいる。ねっちゃんを体全部で感じたい!わたしの体がどろどろに溶けてくる
。
ねっちゃんの指がそっと乳首に触れる。あぁっ!!思わず大きな声があがってしまう。
「菜穂子ちゃんはこうされるのが好きなんだ」恥ずかしくて、顔をそむける。
「僕にどうして欲しいのか、声に出して言ってごらん」
「あぁ、恥ずかしい……。お願いです……縛ってください。菜穂子は胸をきゅうぅっと絞
られるように縛られるのが……好きです」お願いです、縛ってください!お願いです、縛
ってください!頭の中をずっと同じフレーズがリフレインしている。お願いです……、お
願い……。
「胸をぎゅうぅっと強く縛って欲しいんだ?」わたしはこっくりと頷く。
「それからどうして欲しいの?」
「それから……、脚を広げられないように、揃えて縛って……欲しい」
「どうして?」
「菜穂子は縛られるのが好きな……えっちな女の子だから……。大きく脚を広げて……恥
ずかしい格好しちゃうから……。だから……」
ねっちゃんは黙って頷くと、そろりとロープの束をつかんだ。背中にわたした両手首を
ぎこちない手つきで縛める。残ったロープを胸にまわす。甘い吐息が洩れる。
「もっと……強く……縛ってください」「こうかい?」もっと強く……、もっと……、も
っと……。
わたしは立っていられなくなり、腰を抜かしたように畳の上にへたりこんでしまった。
いつしか二人とも汗だくになっていた。ブラウスが肌にはりつき、屹立した乳首がさらに
際立つ。しっかりと腕が背中に固定され、身動きがとれない。ときどき体を身悶えさせて
、拘束されてしまったことを、確認する。わたしはねっちゃんに縛られてしまったのだ。
どんなに逃げようとしても、もう抵抗することはできない。そう思うと、胸に切なさがこ
みあげる。
縄留めを終えたねっちゃんが、わたしの正面にまわり、顔を覗き込む。いやだ……、わ
たし、いま、どんな顔をしているんだろう?……きっとすごくえっちな顔。恥ずかしい。
「膝で立ってくれる?」「……はい……」膝立ちになろうとするのだけれど、腰が抜けて
しまってうまく立ち上がることができない。すぐにへなへなとなってしまう。
「大丈夫?」ねっちゃんが腰を抱えて引き上げてくれる。なんとか膝立ちすることができ
た。すると、わたしに正対して正座しているねっちゃんの顔が、わたしの縄に絞りだされ
た乳房の真正面にくる。
「すごいよ……。おっぱいこんなになっている」ねっちゃんの手が両の乳房を握りしめ、
顔を谷間に埋める。ねっちゃんは目を閉じ、深く息を吸い込む。
「ごめんね。汗臭いでしょう?」「あぁ、いい香りだ」ねっちゃんの指が乳首を摘まみ、
くりくりとひねる。
「ああああぁぁぁっ!!」頭のなかで火花が散る。
「菜穂子ちゃん、おっぱい、どうなっている?」
「あぁっ、ぱんぱんになってます」
「乳首は?」
「恥ずかしい……、お願い……、言わせないで」
「言わせたい。……乳首はどうなっているの?」
「つんつんに勃ってます」
「どうして?」
「ねっちゃんに……、縛られたから……」
ねっちゃんは背後からわたしの腰を抱いて立ち上がらせると、椅子にわたしを腰掛けさ
せた。ロープをもう一本とりだすと、足首から膝までを揃えて縄を掛けていく。さらに全
身を厳しく拘束されて、わたしはすっかり酔ってしまった。もう完全に自分の意志で身動
きすることを封じられてしまったのだ。ねっちゃんに何をされても、わたしはもうどうす
ることもできない。お願い……誰か助けて……、ねっちゃん……、もっと恥ずかしいこと
をして。おっぱいを触って。吸って。乳首をくりくりして。恥ずかしい言葉を言わせて。
「みてごらん」今まで気がつかなかったが、わたしの正面に鏡があった。胸が締めつけら
れるような衝撃。これが……、わたし?
鏡の中のもう一人のわたし。縛られる悦びに輝いている、美しく、そしていやらしい顔
。ねっちゃんの指がブラウスのボタンをはずしていく。穴あきブラジャーとロープによっ
てぱんぱんに膨らんだいやらしい果実が、露になっていく。ねっちゃんが背後からわたし
を抱きしめ、乳首をつまんでくりくりとひねったり、伸ばしたりする。気持ちいい!!あ
まりの快感に体が溶けてしまいそうだ。ねっちゃんはわたしの耳たぶやうなじに舌を這わ
せながら、「菜穂子ちゃん、いま、なにをされているの?」と問いかける。
「あぁ……ねっちゃんに乳首をくりくりしてもらっています」
「鏡をよく見てごらん……、菜穂子ちゃんはどんな顔をしている?」
「すごく……、すごくえっちな顔をしています」
「あぁっ、ねっちゃん、どうして?」
「ん?」
「どうしてわたしがして欲しいことが、わかっちゃうんですか?」
「菜穂子ちゃんをみていると、こうされるのがうれしいってわかるからだよ。今の菜穂子
ちゃんはとても綺麗だ」
「ごめんね……」
「どうして?」
「わたしだけ悦んじゃって」
「言ったろ?菜穂子ちゃんの悦びが僕の悦びだって。僕が悦んでいることがわかるだろ?
」
ねっちゃんの腰が、背後からわたしの腰のあたりに押しつけられた。
「あっ!!すごい……、ねっちゃん、熱いよ……、あぁっ!ねっちゃんが欲しい!!!」
「あー!ダメだ!!これ以上聞くと我慢ができなくなっちゃう!!菜穂子!!あんた、話
しながら、もうあそこぐしょぐしょだろう!!」
「うん……」
「あたしもだよ。もう我慢できない。菜穂子を縛りたくなっちゃうよ」そういうと、初音
は携帯電話をとりだした。
「あいつ呼び出して、一発やらないとおさまらないよ。あたし、もう帰るね」
「なんか……ごめんね」
「いいよ、よかったじゃない。やっと夢がかなって」
「うん、初音……、ほんとうにありがとうね」
「やだよ、みずくさい」
「初音のおかげで、どれだけ救われたかわからないよ」
「友達じゃん」
「うん」
「そうだ、こんどその穴あきブラジャーってやつ貸してよ。あいつをびっくりさせてやる
んだ」
「いいよ。なんなら、いま持ってく?」
「あっ、今日はダメ。菜穂子につけさせたくなっちゃうから」
「それも……、いいよ……」
「……、菜穂子……」
《Self Bondage》 Fin
Thanks for ALL
By ねっちゃん
-END-