Self Bondage


part1
 ポケットからキーホルダーを取り出し、玄関を開ける。靴を脱ぎながら、「ただいまぁ
」と菜穂子は声をかけた。習慣って怖いなぁ、と菜穂子は思う。誰もいないとわかってい
るのに。懸賞で2泊3日の温泉旅行のペア券が当たったから、たまにはゆっくり二人で羽
根をのばしてきなよ、と菜穂子が両親にプレゼントしたのだ。            
 時計の針は4時45分を指している。なんとか間に合った。帰りにスーパーに寄って遅
くなってしまった。5時きっかりにと、時刻を指定しておいたのだ。留守の間に配達にき
て、手元に届くのが明日になってしまったら計画が台無しだ。ましてや隣りのおばさんが
預かったりしたら。さらにそのおばさんが好奇心に駆られて中を見てしまったりしたら!
 想像はどんどん悪い方に転がっていき、心臓の鼓動がはやまる。だいじょうぶ、郵便受
けは確認した。不在通知なんか入ってなかった。菜穂子は気を落ち着かせるために、コー
ヒーをサイフォンで淹れた。                           
 一息ついたとき、ドアフォンが来客を知らせた。「宅配便です」「はぁい」声が上ずっ
ている。急いで印鑑を取り出し、それを受け取る。菜穂子は配達人の顔を見ることができ
なかった。この人は箱の中身を知っているかもしれない、ふとそんな想念が脳裏をよぎっ
たのだ。そんなこと、あるはずがないのに。                    
 部屋に戻ると、中から施錠し、窓のロックも何度も確認し、カーテンを閉めた。梱包を
開けると、夢にまでみたものが中から現れた。思えば、菜穂子はこのためにずいぶんと出
費をした。温泉旅行のチケットを2枚購入し、ウェブ・ショップで2週間かけて吟味した
。それは高校2年生の菜穂子には高い買い物だった。預金通帳の残高はいっきに半分近く
減っていた。                                  
 計画を始めるのはお風呂からあがってからだ。菜穂子はそれを再び段ボール箱に詰めな
おすと、ベッドの下の収納スペースに押し込み、部屋をでた。玄関の施錠を確認し、両親
の寝室、父の書斎、応接間、居間、キッチン、トイレからお風呂まで、窓の施錠を確認し
た。せずにはおれなかった。                           
 食事をすませ、居間でくつろいでいるとき両親から温泉についたとの連絡がはいった。
こっちも気楽に一人暮らしの気分を楽しむから、思いっきりたのしんどいで。鬼のいぬ間
のなんとかっていうでしょ。心配いらないから。それだけ言うと電話を切った。午後8時
。もう一度、家中の施錠を確認すると留守番電話モードに切り替え、携帯電話の電源を切
った。                                     
 お風呂にお湯を入れながら、菜穂子はぼんやりと考えていた。どうしてなのかなぁ。わ
たしってやっぱりおかしいのかしら。                       
 菜穂子は浴室の姿見に全身を映した。透きとおるように白い肌、均整のとれた肢体。豊
かに実った2つの果実は、重力に抗してツンと上を向いている。菜穂子は美しいと思った
。多くの男子生徒が菜穂子に熱い視線を送っていることを菜穂子は知っていた。しかし、
積極的に恋愛を楽しもうとは思わなかった。                    
 わたしに普通の恋愛ができるのかしら?わたしの体の奥で蠢(うごめ)く、ある衝動。
それと正面から向き合わなければならない。菜穂子は心に決めていた。わたしのベッドの
下にある、それ。それを思うと、乳首と秘密の場所に甘い疼きを感じる。       
 お風呂から上がると、もう一度家中の施錠を確認した。カーテンも念入りにチェックす
る。もし誰かに覗かれたならば、そいつを殺してわたしも死ぬ。菜穂子はベッドサイドに
包丁を置いた。                                 
 菜穂子は箱の中のものをベッドの上に並べた。幅2〜3cm長さ7mのゴム製のロープが
3本、ゴム製のハイレグビキニのパンティ、その部分にはジッパーがついている。そして
、同じくゴム製のウエストニッパーと、乳房搾り出し用の穴あきブラジャーであった。菜
穂子の瞳が妖しく潤んだ。                            



part2
 一度部屋を出て、父の書斎に向う。父がいつもそれをどこに隠しているのか、菜穂子は
知っていた。                                  
 若草がうっすらと生い茂り、硬かった蕾が豊かに膨らみ始めた中学生の頃、菜穂子は自
分の中に潜む衝動にどう対処してよいかわからず、人知れず悩んでいた。そんな時、偶然
父の書斎でそれを見つけたのだ。その時の衝撃は今も忘れられない。こんなバカなことで
悩んでいるのは世界中にわたしひとりじゃないのか?菜穂子はそう思っていたのだ。わた
しひとりじゃないんだ、安心したような、不思議な感覚に包まれたのを覚えている。  
 それはいつもの場所にしまってあった。その本を胸に抱いて、菜穂子は自室に戻り、し
っかりと施錠をした。今回の計画を思い立った一枚のグラビア。それを見たとき、息が止
まるかと思った。                                
 菜穂子はそっとページを開く。女の人がゴムのロープで縛られている。足首から膝の上
下、ウエスト、そして背中に回された両腕、豊かなバストに、きつくロープは食い込んで
いる。頭の芯がぼうっと痺れてくる。                       
 タンスの引出しからスカーフを取り出すと、自分の口を覆い、その顔を鏡に映してみる
。そっとスカーフの上から指で唇をなぞる。「菜穂子。もうおまえはこの縄からのがれる
ことはできないんだぞ」声に出していってみる。少しくぐもっているが、ちゃんと言葉に
なっている。やっぱり、口に詰め物をしないと、完全に声を塞いだことにはならないわ。
いいや、それは後からにしよう。                         
 ドレッサーから制服をだし、着替える。紺のハイソックス、白いブラウス、タータンチ
ェックのミニスカート、衿元にはエンジ色のリボン、グレーのベストに同色のブレザー、
猿轡を噛まされた高校2年生が、鏡の中にいる。                  
 ロープを二つ折りにし、一方の端を鏡台の前に置いてあるスチール棚の支柱に結びつけ
る。もう一方の端を左手首に結わえて、腕を背中に回し、支柱から遠く離れようとする。
しかし、ロープに体が引っ張られるほど離れようとすれば、部屋から出なければならなく
なる。菜穂子はそのまま体を一回転させ、ロープを乳房の上に通した。自由になる右手で
ロープの位置を整え、ロープをいっぱいに引っ張った。さらに一回転、今度は乳房の下側
を引き絞る。"よいではないかごっこ"という言葉が頭に浮かぶ。時代劇で悪代官だか悪徳
商人だかが女の人をかどわかし、"よいではないか、よいではないか"といいながら着物の
帯を引っ張るのだ。女の人は"あ〜れ〜"とかいって、ぐるぐるまわる。わたしの場合は、
あれとは逆ね。                                 
 まだロープが余っているので、今度は左の乳房の下から、右の乳房の上にたすきがけに
絞る。最後に右手も背後に回し、右の手首にロープを巻きつけて左の手首をつかんで出来
上がり。鏡の中には、わたしではない、もうひとりのわたしがいる。         
 ゴムに強く締め上げられて、呼吸が苦しい、胸が異様に強調されて恥ずかしい。縛られ
た手首が、腕が、お乳が、そしておへその下のあたりが熱い。            
 本当に好きな男の子ができたら、こうして縛られたい、と思う。でも、怖い。男の子は
体も大きくて、力も強くて、ギラギラしていて怖い。ヤリたいばかり、眼が、顔がそう言
っている。縛られて、抵抗できないと、なにをされるかわからない。強姦魔だったりした
ら殺されるかもしれない。イタイのは、イヤ。ただ縛られて、縄に抱きしめられて、それ
だけでいいのに。                                
 鏡の中のわたしが、うっとりした眼でわたしを見つめている。いけない。手首に跡を残
しちゃったら、学校に行けなくなっちゃう。今度はあれを試す番だ。明日、忘れずに制服
をクリーニングに出さなくちゃ、しわになっちゃった。               
 菜穂子は逆の手順でロープを解くと、制服を脱ぎ、ブラジャーもはずし、ショーツだけ
になった。猿轡はそのままだ。特性のブラジャーを手にとる。ゴムでできていて、乳房の
部分は穴があいている。肩に通し、背中のホックを留める。穴の部分は菜穂子の乳房の直
径の半分ほどしかない。強力なゴムを引き伸ばし、乳房全体を穴から引き出す。ゴムが戻
ろうとする力は乳房の根を強烈に締め上げる。あぁ〜、菜穂子は呻いた。異常に膨れ上が
った乳房は皮膚を限界まで引き伸ばされてつややかに光り輝き、神経が集中している乳首
はツンツンに尖り勃ち、ジンジンと地熱を孕んで疼く。鏡に映るそれは、意思を持った生
き物のようだ。乳首の疼きに連動して、あそこも熱く滾(たぎ)ってきている。    
 もし、このブラジャーを着けて学校に行ったらどうなるかしら?菜穂子は再び制服を手
に取った。ブラウスの袖を通し、衿のボタンを留める。2番目のボタンまでは留めること
ができたが、3番目と4番目のボタンを留めることができない。やっとの思いで留めたが
、いまにもはちきれそうだ。ぐっと力を込めて、胸を反らせば、一気にボタンは弾け飛ぶ
だろう。やってみたい衝動に駆られたが、ボタンを付け直している自分の姿を想像してし
まい、思いとどまった。ブラウスの布地が乳首を擦る。               
 なんとかベストとブレザーを身につけ、鏡を覗く。うわっ、すごい!!裸よりも100
倍いやらしい!!胸が強調されているなんてものじゃない。おっぱいおばけだ。ブラウス
とベストとブレザーを通しても、乳首がびんびんに勃っていることがわかる。これがわた
し?                                      
 みんな何ていうかしら?こんないやらしい女だとは思わなかったって?でも、これがわ
たし。いま、どろどろのマグマがわたしの内側から噴き出してきている。うっすらと眼を
閉じているわたし。首筋もおっぱいも、内股も汗でぐっしょり濡れている。そ〜っと、胸
を突き出すように背を反らす。お乳がさらに大きく張り詰めていく。         
 右手で右の、左手で左のお乳をそっと包み、ブレザーの上から乳首をつまみ、やさしく
爪弾く。うあああああぁぁぁっ!乳首に電流が走り、眼の中で火花が散る!!立っていら
れない。膝がカクカクと崩れ、ベッドに倒れこんでしまった。            


part3
 身体中の神経が乳首とあそこに集中しているようだ……。菜穂子はベッドに身を横たえ
、肩を後ろに入れて、肩と腰を支点に胸を突き出すように背を反らす。根を絞られてコン
コンに硬くなった乳房がさらに硬さを増して張り詰める。              
 外に飛び出そうとする乳房と、内に封じ込めようとする制服との間で、乳房が内側から
爆発しそうだ。乳首をピンと弾くと、チーンと青磁器のような金属質の音をたてるかもし
れない。ブレザーの上からでもはっきりとわかる屹立した乳首を、制服越しにカリカリと
引っ掻く。厚い生地を通しての刺激がもどかしく、胸が絞めつけられるようなせつなさが
こみ上げてくる。                                
 無意識のうちに菜穂子は大きく脚を広げ、下着越しに大切な場所に指を伸ばしていた。
そこはすでにじっとりと湿り気を帯びている。指が乳首に触れるたびに、あっ、あぁん、
と甘い声をあげずにはいられない。頭の中は真っ白になって、何も考えられない。   
 ……気持ちいい……きもちいい……キモチイイ……。               
 皮膚の内側がどろどろに溶ける、体全体が灼熱の溶鉱炉のようだ。         
 窓の向こうから犬の遠吠えが聞こえてきて、菜穂子は我にかえった。いけない、声が漏
れたらたいへん……。                              
 菜穂子はベッドから起き上がると下履きを脱ぎ、裏返してその部分に当たっていた布地
を見つめた。やや黄色みを帯びて白濁した粘り気の強い液体が、べっとりとそこを濡らし
ている。菜穂子は鼻を近づけて匂いを嗅ぐ。わたしの匂いだわ……。         
 菜穂子はゴム製のジッパー付パンティにはきかえる。               
 口を覆っていたスカーフを一度はずし、下着の汚れた面を奥に口の中に押し込み、再度
スカーフできっちりと口を覆った。舌の先が自分の液でぬるぬるする。呼吸するたびに乳
房が締め上げられて苦しいのに、口に詰め物をすることでさらに息苦しくなってくる。ウ
エストニッパーをとりだして、ブラウスの上からウエストを絞る。苦しくて恥ずかしくて
、それが気持ちいい。                              
 ゴムのロープを二つ折りにして、そろえた足首に巻く。折り返した部分にロープを通し
、裏側を通るロープにからめて絞ると、ロープはきっちり足首に密着する。そのままロー
プを膝の下まで伸ばし、両足を一周させると、足首と同じように膝の裏側を通したロープ
にからめて絞る、さらに膝の上まで。両足はぴくりとも動かすことができなくなってしま
った。ロープをもう一本もって立ち上がると、ぴょんぴょん跳ねて鏡の前に行く。   
 ブレザーとベストを脱ぎ、ブラウスだけになる。ロープの中心部分を乳房の上辺、体の
中心線に合わせる。乳房の上下を巻き絞め背中で一度交差させると、肩から首を通して縦
に乳房をしめあげ、首の後ろで縄留めをする。                   
 跡が残っちゃうかもしれないな……。いいや、それは後から考えよう。       
 両手を背中で組み、鏡に映る菜穂子をチェックする。あまりの恥ずかしさに菜穂子は思
わず俯く。すると縄に搾り出されて膨れ上がった乳房が、視界いっぱいに飛び込んでくる
。                                       
 きれいだわ……。鏡の中の縄を身に纏った少女は、羞恥と悦びと体の奥底から湧き上が
る自分でも理解できない感覚に身悶えている。                   
 脚を思い切り広げたい……。しかし、広げることはできない。せつなく、やるせなく、
気がつけば涙が頬をつたっていた。                        
 体の芯が熱い……。行き場のない感覚をもてあまし、くねくねと太腿を擦りあわせる。
すべすべの太腿の感触が新たなせつない感覚を呼び起こす。             
 なんていやらしい体だろう……、わたし、どうなっちゃうんだろう……。      
 菜穂子は自分の体をこんなに呪わしく、そしていとおしく思ったことはなかった。  
 ベッドの端に腰を下ろすと、芋虫のように体を移動させた。ブラウスのボタンをはずし
、パンパンに張り詰めた乳房を露出させる。そっと、充血して尖った乳首を摘まむ。あぁ
っ!!頭の奥で何かが弾ける。                          
 右手の指先と掌で左の乳首を愛撫すると、腕の内側が右の乳首をやさしくこする。片手
で両方の乳首を愛せるなんて便利ね、そんなことを考えながら菜穂子は左の手をゴム製パ
ンティーのジッパーにかける。溢れ出す蜜を人差し指にすくい目の前まで持ってくる。親
指に擦りつけて離すと、ツーと糸をひく。右手の指にも蜜をすくい、両の乳首に擦りつけ
る。ぬるぬるとした感触がいやらしい。夢中になって乳首に戯れているうち、摩擦熱で水
分が飛び、ねちゃねちゃと粘度が増してくる。乳首と指の間の摩擦が増え、刺激がさらに
先鋭化してくる。                                
 再び右手だけで両の乳首に刺激を与えながら、左手は蜜が湧き出す泉に向かう。菜穂子
の全身を大きな津波が襲う。快楽の嵐に揉まれ、やがて菜穂子は絶頂を迎えた。    
 引いていく潮にたゆたい、心地よい倦怠感に包まれて、ゆっくりと自らを縛(いまし)
めるゴムから解放されていく。あぁ、気持ちよかった、明日はあれを試してみよう。菜穂
子の思いはすでに明日の楽しみへと飛んでいる。                  
 これがマゾの快感っていうやつ?                        
 乳房の周りにくっきりと残った跡を指先で慈しみながら、菜穂子は思った。でもわたし
はイタイのは、イヤ。暴力は、キライ。                      
 菜穂子は、手錠をかけられて高速道路に捨てられ、死亡した少女の事件を思い出した。
あの犯人は、たしか教師だったはず。そんなヤツ、絶対、許せない。         
 菜穂子はクラスメイトの中にも、出会い系サイトやテレクラを利用しているコたちがい
ることを知っている。でも菜穂子には、どうして見も知らぬ人間にそんな無防備な姿をさ
らすことができるのか、理解できない。菜穂子の嗜好が、一歩間違えばとんでもない事態
を引き起こしかねないことを、菜穂子自身よく知っているから、よけいにコワイ。   
 いつか本当に好きな人ができたら……。このロープやブラジャーは、今はわたしだけの
宝物。だけど、もし、心からわたしを愛してくれて、わたしも身も心もこの人にだったら
ゆだねてもかまわない、そんな人が現れたら……                  
 そのときはこの宝箱をそのひとにそっと見せよう。そしてふたりだけの宝箱にすること
ができたら……                                 
-END-